頭痛
頭痛は、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分類されます。一次性頭痛は、日常生活に支障があるものの、緊急性が低い頭痛で、片頭痛や緊張性頭痛、群発頭痛などが含まれます。一方で、二次性頭痛には、脳出血やくも膜下出血などの緊急性の高い疾患が含まれます。
当院では、頭痛の緊急性を見極め、手術や入院が必要な場合は専門病院に紹介させていただきます。大したことないと思われる頭痛でも、ご相談いただければと思います。
一次性頭痛と二次性頭痛
頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます。
一次性頭痛
脳に異常がない頭痛です。
疾患例
片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛など
二次性頭痛
脳に異常があって生じる頭痛で、緊急性が高いものも含まれます。
疾患例
脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍、頭部外傷など
二次性頭痛を疑う症状
このような症状があれば、ただちに受診してください。
- 突然の頭痛
- 今までに経験したことのないひどい頭痛
- 頭痛の頻度と強さが増していく
- 麻痺や、物が見えにくい、視野が欠ける、喋りづらい、言葉が出てこないなどの症状がある
- 意識障害がみられる
- 不穏、性格の変化、認知機能の低下
- 発熱、吐き気、嘔吐
- 首の後ろが固くなって首を前に曲げにくい
一次性頭痛と二次性頭痛の鑑別
MRIやCTを用いて、脳の状態を調べます。
当院には両方の検査装置がありますので、即時検査が可能です。
一次性頭痛の代表例
片頭痛
片頭痛とは
頭の片側が痛む症状ですが、実際は約4割の方が頭の両側に痛みを感じます。女性に多いのも特徴です。
頭痛が起こる前にキラキラした光やギザギザの光が見えることもあります。
片頭痛の頭痛は4~72時間続き、起きていられないような痛みで日常生活に支障をきたすことがあります。
片頭痛の症状
- 頭の片側の痛み (両側の場合もあります)
- ドクンドクンと脈立つような痛み
- 起きていられないような状態で、寝込んでしまう
- 体を動かすと痛みがひどくなる
- 吐き気、嘔吐
- 光や音に敏感になる
片頭痛の治療
片頭痛の重症度に応じて、お薬を選びます。
また、頭痛発作に対するお薬と、頭痛を予防するためのお薬があります。
頭痛発作時のお薬
アセトアミノフェン・非ステロイド性抗炎症薬
市販でも普及している痛み止めで、軽度の頭痛に対して処方します。
- アセトアミノフェン
- ロキソプロフェンナトリウム水和物
トリプタン製剤
神経伝達に関与するセロトニン受容体に作用し、脳の血管の収縮や拡張に関わる物質の放出を抑制することで、頭痛を抑えます。頭痛が始まって1時間以内に服用すると効果が期待できます。逆に、頭痛のピークに服用しても、効果は期待できません。
錠剤のほかに点鼻薬や注射製剤もあります。
- スマトリプタンコハク酸塩
- リザトリプタン安息香酸塩
- エレトリプタン臭化水素酸塩
- ゾルミトリプタン
- ナラトリプタン塩酸塩
※血管収縮作用があるため、脳や心臓の血管障害のある方や、コントロール不良の高血圧の方には、使用できません。
ジタン製剤
お薬の成分が、神経伝達に関与するセロトニン受容体に結合し、片頭痛発作を起こす物質を抑制します。血管収縮作用が少ないため、トリプタン製剤の使用が難しい患者様にもお勧めです。また、飲むタイミングが効果に影響しにくいお薬です。
- ラスミジタンコハク酸塩
※副作用として眠気やめまいが生じることがあります。服用後の自転車や自動車の運転はお避け下さい。
頭痛予防のためのお薬
片頭痛の発作頻度が高い方に対しては、頭痛のないときから使用する予防薬を使用することがあります。
予防により、発作の程度や頻度の軽減が期待できます。
従来からの予防薬
- ロメリジン塩酸塩
- プロプラノロール塩酸塩
- バルプロ酸ナトリウム
- アミトリプチリン塩酸塩
CGRP関連片頭痛治療薬
最新の片頭痛予防薬です。
片頭痛は、脳内にカルシトニン遺伝関連ペプチド(CGRP)といわれる物質が増え、脳の血管の収縮や拡張に作用するために生じると考えられています。
CGRP関連片頭痛治療薬は、このCGRPの働きを抑えます。1カ月に1回の注射を行います。
- ガルカネズマブ
- フレマネズマブ
- エレヌマブ
緊張型頭痛
緊張型頭痛とは
一次性頭痛の中で最も多い頭痛です。
頭痛は30分~7時間続き、締め付けられるような痛みが頭の両側に生じることが多いです。片頭痛のような脈立つような痛みはなく、寝込んでしまうこともありません。
緊張型頭痛の症状
- 頭の両側の痛み
- 圧迫されるような、締め付けられるような痛みがある
- 頭痛のために日常生活に支障が出ても、寝込んでしまうほどではない
- 歩く、階段を昇り降りするといった日常的な動作で痛みがひどくなることはない
緊張型頭痛の治療
緊張型頭痛の重症度や頻度に応じて、お薬を選びます。
また、頭痛発作に対するお薬と頭痛を予防するためのお薬がありますが、緊張型頭痛の痛みは、筋肉が緊張して首や肩がこり固まってしまうことが原因だと考えられています。そのため、薬による治療だけでは、頭痛は根本的には治りません。日頃の生活において、首・肩のこりの予防やストレスをためない工夫も大切です。
頭痛発作時のお薬
鎮痛薬
市販でも普及している痛み止めです。
- アセトアミノフェン
- イブプロフェン
- ロキソプロフェンナトリウム水和物
筋弛緩薬
筋肉の緊張を和らげるお薬です。
- エペリゾン塩酸塩
- チサニジン塩酸塩
- バクロフェン
頭痛の予防のためのお薬
抗うつ薬や抗不安薬
不安や緊張を和らげるお薬です。
- アミトリプチリン塩酸塩
- エチゾラム
- アルプラゾラム
生活習慣の見直し
首・肩のこりの予防
- 長時間同じ姿勢をとらない (デスクワーク、スマートフォンの見過ぎ、長時間の運転など)
- 首まわりのストレッチをする
- 背筋を伸ばして、美しい姿勢を心がける
ストレスをためない工夫
- ウォーキングなどの軽い運動を定期的に行う
- 睡眠の質を上げる
群発頭痛
群発頭痛とは
片側の目の奥や目の周りがえぐられるような、じっとしていられない猛烈な痛みに襲われる疾患です。痛みは側頭部や下あご、歯にも広がることがあります。頭痛は、1~2カ月の間、毎日続きます。
これまで20~30代の男性に多いといわれてきましたが、最近は女性にもみられます。
片頭痛とは対照的に、頭痛発作中は、落ち着きがなく興奮した状態になる方が多いです。
群発頭痛の症状
- 目をえぐられるような激しい頭痛
- 目の充血、涙
- 鼻水、鼻づまり
- まぶたのむくみ
- 額や顔面の発汗
- 瞳孔の縮小、まぶたが下がって目を開けにくい (眼瞼下垂)
- 落ち着きがなく、興奮した様子
群発頭痛の治療
偶発頭痛に対して、一般的な鎮痛剤はほとんど効果がありません。頭痛発作時の対症療法と予防療法をうまく組み合せることが重要です。
また、お酒・タバコなどは頭痛を悪化させるため、生活習慣を見直すようにしましょう。
頭痛発作時の治療
- スマトリプタン(トリプタン製剤)の皮下注射
- 酸素吸入(マスクで7~10L/分×15分間)
頭痛予防のためのお薬
- ベラパミル塩酸塩
- 副腎皮質ステロイド
- 炭酸リチウム
- バルプロ酸ナトリウム
生活習慣の見直し
群発頭痛の詳しい原因はわかっていませんが、下記の要因が頭痛を増悪させるのではないかと考えられています。
- アルコールの過剰摂取
- タバコ
- 急激な気圧変化
- 不規則な時間帯の睡眠