喋りづらい・言葉が出てこない
喋りづらい・言葉が出てこないという症状は、その原因により治療法が異なります。また、脳梗塞・脳出血・脳腫瘍などの重大な病気が原因のこともあり、正しい診断が重要です。当院で原因を調べますので、自己判断せずにご相談いただければと思います。
喋りづらい・言葉が出てこないという症状について
失語症
頭部外傷や脳梗塞・脳出血といった脳血管障害(脳卒中)、脳腫瘍などによって、大脳の言語をつかさどる部分が損傷を受け、「話す」「聞く」「読む」「書く」ことがうまくできなくなった状態です。
失語症の症状
- 話を理解することができない
- 伝えたい言葉が出てこない、間違える
- 相手の言ったことを復唱できない
- 文字が読めない、書けない、理解できない
代表的な4つの失語症があります。
感覚性失語
側頭葉にある「ウェルニッケ野」という部分の障害で起こります。これにより、他の人が話している言語や書いてある言語の理解が難しくなります。
音は聞こえていますが、理解ができません。また、言葉は話せますが、言い間違いや「錯語」という症状が現れます。
錯語
- 音を間違える(音韻性錯語)
例:えんぴつ→えんぺつ - 別の言葉に間違える(語性錯語)
例:えんぴつ→消しゴム
運動性失語
前頭葉の「ブローカ野」という部分の障害で起こります。他の人が話していることが理解でき、自分が伝えたいことは思い浮かびますが、自分の伝えたいことを言葉にすることができなくなります。喋るリズムや抑揚が不正確になり、音韻性錯語も生じます。また、相手の話を復唱できません。
伝導性失語
頭頂葉下部の障害で起こります。他の人が話していることが理解でき、流暢に話せますが、音韻性錯語が生じます。また、相手の話を復唱できません。
全失語
脳の広範囲の障害で起こります。「話す」「聞く」「読む」「書く」ことができず、他の人とのコミュニケーションが困難になります。
構音障害
構音とは、咽頭・口腔・鼻腔などの形を変えて、言葉をつくることです。
言葉を理解できて伝えたいことがあるのですが、音を作る器官やその動きに問題があり、うまく発音できない状態を「構音障害」といいます。
構音障害の症状
- 喋りづらい、呂律が回らない
- 発音が悪い
- 声が鼻にかかる
- 小声
- 声が出にくい
- 声がガラガラする
構音障害には、「器質性構音障害」「機能性構音障害」「運動性構音障害」があります。
器質性構音障害
口蓋裂などの生まれつきの状態や病気・ケガにより、咽頭や口腔の構造に異常があるために起こる構音障害です。
機能性構音障害
言語を習得するときに、間違った発音を覚えてしまったために起こる構音障害です。
運動性構音障害
脳梗塞・脳出血といった脳血管障害(脳卒中)やパーキンソン病などの神経筋疾患が原因で起こる構音障害です。
発声障害・失声症
発声障害(音声障害)は、声を生み出す声帯の異常によって、声の質が悪くなったり、声を出しにくくなったりする状態です。声帯を動かす神経が麻痺すると声が枯れます。この神経の麻痺は、風邪でも起こりますが、咽頭がん・甲状腺がん、食道がん、肺がんなどによっても起こります。また、声帯のポリープが原因のこともあります。
声帯に異常がないのに、心理的・精神的な問題で声が出なくなる「心因的失声症」も含まれます。
発声障害の症状
- 声が枯れた、声がかすれる
- 声が出にくい
- 高い声が出ない
- 大きい声を出せない
- うまく息を吐けない
失声症の症状
- 声が出せない
喋りづらい・言葉が出てこない原因について
喋りづらい・言葉が出てこない原因は主に、「脳由来のもの」「神経筋由来のもの」「耳鼻咽喉科の疾患が原因のもの」「ストレス・心因性のもの」に分けられます。
脳由来のもの
脳に異常があって生じる言語障害です。緊急性が高いものも含まれます。
疾患例
脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など
脳血管障害(脳卒中)による言語障害の特徴
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によるものには、下記の特徴があります。
- 体の片側が急にしびれる
- 片方の手や足がしびれる
- 感覚障害
- 体に喋りづらい・言葉が出てこない
- 口を動かしにくい
※このような症状が出たときは、ただちに受診してください。
神経筋由来のもの
神経や筋肉の異常が原因の言語障害です。
疾患例
パーキンソン病、ALSなど
耳鼻咽喉科の疾患が原因のもの
咽頭・口腔・鼻腔、耳などの異常が原因の言語障害です。
疾患例
声帯ポリープ、咽頭がん、口蓋裂、聴覚障害など
ストレス・心因性のもの
声帯に異常がないのに、心理的・精神的な問題で声が出なくなる「心因的失声症」があります。
当院の治療
当院は、脳と脊髄・脊椎、末梢神経、筋肉の治療を専門としています。
診断の結果、手術や入院が必要な場合は専門病院に、耳鼻咽喉科などの他科受診が必要な場合は地域の専門医を紹介させていただきます。
脳由来のもの
脳梗塞
脳梗塞とは
脳の血管が詰まってしまう疾患で、特に高齢の方に多くみられます。
脳梗塞の症状
- 片方の手足の麻痺やしびれ
- 喋りづらい・言葉が出てこない
- 喋りづらい
- フラフラする
- 視野が欠ける
- 人の言っていることが理解できない
- 意識がない
脳出血
脳出血とは
脳の中の細い動脈が何らかの原因で破れて出血する疾患です。
脳出血の症状
- 経験したことのないひどい頭痛
- 体の片側の麻痺やしびれ
- 顔のゆがみ
- 力が入りにくい
- 喋りづらい
- フラフラする
- 視野が欠ける、物が二重に見える
脳腫瘍
脳腫瘍とは
頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称です。
悪性のものと良性のものがありますが、良性であったとしても、硬い頭蓋骨の中には腫瘍が膨らむスペースがないため、重篤な症状を引き起こす恐れがあります。
脳腫瘍の症状
- 頭痛が続く
- 吐き気、嘔吐
- めまい
- 視力低下、視野が欠ける、物が二重に見える
- しびれ、手足や顔の麻痺
- 言葉が出てこない
- 聴覚障害
- ふらつき、力が入らない
- けいれん
神経筋由来もの
パーキンソン病
パーキンソン病とは
パーキンソン病の4徴は、「静止時に手足が震える」「筋肉が固くなる」「動作が鈍くなる」「転びやすくなる」です。
原因は、神経伝達物質のドパミン神経細胞の減少です。ドパミンが減少すると、運動がうまくできなくなります。不足したドパミンをお薬で補充することで、症状の軽減が期待できます。
パーキンソン病の症状
- 止まっているときに、手・足・あごなどが震える
- 手足がこわばって曲げにくい
- 動き始めるのに時間がかかり、ゆっくりとしか動けない
- 転倒しそうになったときに、とっさに手や足が出ない
- 小声、声がれ、喋る速度が単調になる
- 認知機能の低下
ALS (筋萎縮性側索硬化症)
ALSとは
脳や脊髄の筋肉を動かすための神経が障害を受け、筋肉が徐々に弱くなっていく疾患です。
手の指を動かしにくい、喋りづらい、物を飲み込みにくいなどの症状から始まり、やがて全身の筋肉がやせてしまい、呼吸のための筋肉が動かなくなって、多くの方は呼吸不全に陥ります。
ALSの症状
- 手の指が動かしにくい
- 手足の筋肉がやせる、力が弱くなる
- 物を飲み込みにくい
- 喋りづらい