力が入らない
手に力が入らなかったり足に力が入らなかったりすると、お箸が持てない、字が書けない、歩けないなどの問題が生じます。
体のどこかに力が入らないという症状は、その原因により治療法が異なります。また、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血・脳腫瘍などの重大な病気が原因のこともあり、正しい診断が重要です。当院で原因を調べますので、自己判断せずにご相談いただければと思います。
力が入らないという症状
手に力が入らない
- お箸が持てない
- 物が持てない
- 片手が使えない
- 字が書けない
- ボタンをかけられない
足に力が入らない
- 歩けない
- 片足が動かない
- 長時間歩くと疲れる
- つまずきやすい
- スリッパが脱げやすい
体に力が入らない
- 体の片側を動かせない
- 脱力感がある
力が入らない原因について
力が入らない原因は主に、「脳が原因のもの」「首が原因のもの」「腰が原因のもの」「神経内科の疾患が原因のもの」に分けられます。
脳が原因のもの
脳に異常により、力が入りにくくなります。緊急性が高いものも含まれます。
疾患例
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脳動脈瘤、脳腫瘍、多発性硬化症など
脳血管障害(脳卒中)による脱力感の特徴
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によるものには、下記の特徴があります。
- 体の片側が急にしびれる
- 片方の手や足がしびれる
- 感覚障害
- 体に力が入らない
- 口を動かしにくい
※このような症状が出たときは、ただちに受診してください。
首が原因のもの
首の異常が原因で脊髄や神経根を圧迫され、力が入りにくくなります。
疾患例
頚椎症など
腰が原因のもの
腰の末梢神経が障害され、力が入りにくくなります。
疾患例
腰部脊柱管狭窄症(間欠性跛行)など
神経内科の疾患が原因のもの
何らかの原因で神経や筋肉が障害され、力が入りにくくなります。
疾患例
ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、ALSなど
当院の治療
当院は、脳と脊髄・脊椎、末梢神経、筋肉の治療を専門としています。
診断の結果、手術や入院が必要な場合は専門病院に、循環器内科などの他科受診が必要な場合は地域の専門医を紹介させていただきます。
脳が原因のもの
脳梗塞
脳梗塞とは
脳の血管が詰まってしまう疾患で、特に高齢の方に多くみられます。
脳梗塞の症状
- 片方の手足の麻痺やしびれ
- 力が入らない
- 喋りづらい
- フラフラする
- 視野が欠ける
- 人の言っていることが理解できない
- 意識がない
脳出血
脳出血とは
脳の中の細い動脈が何らかの原因で破れて出血する疾患です。
脳出血の症状
- 経験したことのないひどい頭痛
- 体の片側の麻痺やしびれ
- 顔のゆがみ
- 力が入りにくい
- 喋りづらい
- フラフラする
- 視野が欠ける、物が二重に見える
くも膜下出血
くも膜下出血とは
「くも膜」と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間にある血管が、突然切れて出血する疾患です。その約8割は脳動脈瘤が原因です。
発症すると生命に危険を及ぼします。
くも膜下出血の症状
- ハンマーで殴られたような激しい頭痛が急に生じる
- めまい、吐き気、嘔吐
- 力が入らない
- けいれん
- 意識がない
脳動脈瘤
脳動脈瘤とは
脳の中の動脈にコブのような膨らみができる疾患です。血管の枝分かれ部分に血流の負荷がかかり、血管の壁が薄くなったりもろくなったりした部分に血液が入り込んで形成されます。
破れていない脳動脈瘤を「未破裂脳動脈瘤」、破裂したものを「破裂脳動脈瘤」といいます。
脳動脈瘤の症状
未破裂脳動脈瘤
- 無症状であることが多いです
- 動脈瘤が大きくなると神経を圧迫して、目の上や目の奥の痛み、瞳孔が大きくなる、視覚異常、顔の麻痺などの症状が現れることがあります
破裂脳動脈瘤
- ハンマーで殴られたような激しい頭痛が急に生じる
- 物が二重に見える
- 吐き気、嘔吐
- 首の後ろが固くなって首を前に曲げにくい
- 力が入らない
- 意識がない
脳腫瘍
脳腫瘍とは
頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称です。
悪性のものと良性のものがありますが、良性であったとしても、硬い頭蓋骨の中には腫瘍が膨らむスペースがないため、重篤な症状を引き起こす恐れがあります。
脳腫瘍の症状
- 頭痛が続く
- 吐き気、嘔吐
- めまい
- 視力低下、視野が欠ける、物が二重に見える
- しびれ、手足や顔の麻痺
- 言葉が出てこない
- 聴覚障害
- ふらつき、力が入らない
- けいれん
多発性硬化症
多発性硬化症とは
中枢神経系が障害される、自己免疫疾患です。
神経線維を覆う髄鞘が炎症を起こして破れることで神経の信号伝達が阻害され、様々な症状が現れます。
多発性硬化症の症状
- 手足のしびれ
- まっすぐ歩けない
- 物が二重に見える、見えにくい、視野が欠ける
- 疲労感
- 筋力低下
- 頻尿、尿漏れ、失禁
- 認知機能の低下
首が原因もの
頚椎症
頚椎症とは
首の骨(頚椎)に生じる関節症です。加齢により首の関節(椎間関節)が痛むことが原因です。
加齢により、首の関節が不安定になったり、骨の間のクッション材である椎間板がつぶれたり、骨の出っ張りができたりすると、首の関節をつなげる靭帯が厚くなるほか、飛び出した椎間板や骨の出っ張りが脊髄や神経根を圧迫してしまいます。これを頚椎症といいます。
脊髄が圧迫される「頚椎症性脊髄症」と、神経根が圧迫される「頚椎症性神経根症」に分けられます。
頚椎症の症状
頚椎症性脊髄症
- 手のしびれ
- 手を使いにくい
- 歩きにくい
- 歩くときにふらつく
- 進行すると、足のや体幹のしびれも生じます
頚椎症性神経根症
- 首から肩甲骨にかけての部分から腕や手にかけてのしびれ、痛み
- 手に力が入りにくい
- めまい
腰が原因のもの
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症とは
加齢により背骨が変形して腰椎部の神経の通り道が狭くなり、その中を通る神経が圧迫されて、足のしびれや痛み、麻痺が生じる疾患です。
腰部脊柱管狭窄症の症状
- 足のしびれや痛み、麻痺
- 長い距離を歩けない
間欠性跛行(かんけつせいはこう)
少し歩くと、足が痛くなったりしびれたりして、歩けなくなり、少し休むと再び歩けるようになる状態を「間欠性跛行」といいます。
主な原因は、腰部脊柱管狭窄症と、閉塞性動脈硬化症です。閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化により血管が細くなって血流が悪くなり、手足や足先に酸素や栄養が十分に行き渡らなくなる疾患です。
神経内科の疾患が原因のもの
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群とは
ウイルスや細菌などによる感染症にかかった約1~4週間後に、手足に力が入らない、感覚がわかりにくい、しびれるといった症状が出現する、末梢神経障害です。
感染症を発端に免疫の動きが活発になった結果、自己免疫が自身の末梢神経を攻撃してしまうためだと考えられています。
ギラン・バレー症候群の症状
風邪や下痢などの感染症にかかった後に、以下の症状が現れます。
- 手足の力が入りにくい
- 手足がしびれる
- 手足の痛み
- 顔の筋肉や目を動かしにくい
- 物を飲み込みにくい
- 症状が悪化すると、呼吸が苦しくなります
重症筋無力症
重症筋無力症とは
重症筋無力症は、体をウイルスや細菌から守るために働く抗体が、間違って自分自身を攻撃してしまうために起こると考えられています。
筋肉を動かす指令は、脳から末梢神経に伝わり、さらに筋肉に伝わります。この末梢神経と筋肉の接合部において、筋肉側の受容体が自己抗体の作用で破壊されてしまい、筋肉が収縮しにくくなってしまう疾患です。そのため、筋肉が疲れやすく、力が入らないという症状が現れます。
重症筋無力症の症状
- 物が二重に見える
- まぶたが下がって目を開きにくい (眼瞼下垂)
- うまく飲み込めない
- 手足に力が入りにくい
- 症状が悪化すると、呼吸が苦しくなります
ALS (筋萎縮性側索硬化症)
ALSとは
脳や脊髄の筋肉を動かすための神経が障害を受け、筋肉が徐々に弱くなっていく疾患です。
手の指を動かしにくい、喋りづらい、物を飲み込みにくいなどの症状から始まり、やがて全身の筋肉がやせてしまい、呼吸のための筋肉が動かなくなって、多くの方は呼吸不全に陥ります。
ALSの症状
- 手の指が動かしにくい
- 手足の筋肉がやせる、力が弱くなる
- 物を飲み込みにくい
- 喋りづらい